秋の弾き語りプチツアー 番外編「スワンボート」

プチツアーで朗読した書きおろしエッセイ「スワンボート」。
♪「小舟」と♪「小石を拾って」の間に、どうしても何かを朗読したかったのです。
どうぞ、皆さんも、♪「小舟」の後に、
このエッセイを読んでいる私を想像してみて下さい。
そして、その後に♪「小石を拾って」を聞いてみてください。

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「スワンボート」

半年ほど前、還暦が近い、私の大切なヒトが、突然、こう言った。
「スワンボートが欲しい」
湖にいる、白鳥の形をした足こぎボートのことである。
いくらで買えるのか、早速ネット検索を始めた彼。
迅速な情報収集によれば、
新品は100万、中古だと30万くらいで買えるとのこと。
けれども、…………本当に買われても困る。
なだめすかして、近くの湖に、スワンボートに乗りにいったけれど、
数日後に迫った台風を考慮して、
早々にスワンちゃんはお休みを頂いていた。
台風に水をさされたせいか、あっという間に彼の口から、
スワンボートのことは出なくなった。


10日ほど前、私は気まぐれに「スワンボート 中古品」とネット検索してみた。
するとメルカリでの出品情報があって
価格は傷みもあってか格安の5万円。
そして、そこに…購入希望者らしき人からの質問が書かれているのを発見した。
「こちら、山口県なんですが、送料はいくらかかるのでしょうか?」
………も、も、もしや?
ちなみに送料は10万円と返事が書いてあった。
私がこのツアーに出るまでは、
我が家には、大きな荷物は何も届いていなかった。
ツアーから帰ったら、駐車場に、いや、隣の田んぼに、
巨大スワンがいたらどうしよう。
不安でたまらない。


こんなふうに、結構、私を困らせる、大人のふりした子供なのだけれども、
このヒトがいたからこそ、今の私がある。
若かった頃の世間知らずのアンポンタンを、唯一、本気で叱ってくれたヒト。
その点は、ホントに感謝している。
でも、でも、巨大スワンが、隣の田んぼにいたら、どうしよう。
ホント、どうしよう。